銅像(ブロンズ像)のメンテナンスについて、当社の考え方

有限会社セキセイ堂 代表:外崎 祥志



セキセイ堂の銅像修復ウェブサイトをご覧頂きありがとうございます。

検索にて、最初にこのページに来た方は、セキセイ堂「銅像の修理・修復・クリーニング」のトップページもご覧下さい。
トップページには写真例と共に具体的な修復方法や銅像修復についての説明が細かくされています。

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「銅像の修理・修復・クリーニング」と簡単に言っても、その方法は様々です。古くからの伝承技術もあれば、最新技術を用いたもの、それらを上手く組み合わせて当社が考え出した独自の方法などがあります。
大型像や高所に設置されていて普段からお手入れが出来ない銅像であれば、日頃のお手入れが簡単に出来る方法もあります。

どの方法を用いるかは、その銅像の現状や依頼者のご要望に合わせて決めます。
もちろん、数多くの銅像修復をおこなってきた経験から、当社より適切なアドバイスをおこなっています。
本来、こうしなければいけないという決まりは無く、臨機応変に対応する柔軟性が必要だと考えています。

この後の文章は、セキセイ堂代表の私が、銅像メンテナンスについての考え方や、当社の事についてまとめたものです。
長文ですが、当社の方針などが分かって頂けると思います。


1.「銅像(ブロンズ像)はメンテナンスこそが大切です」
このページをご覧頂いている方は、何らかの理由で銅像(ブロンズ像)のメンテナンスについてご興味を持っている方だと思います。
多くは銅像の管理者の方、または持ち主の方からメンテナンス(修理・修復・クリーニング)を依頼された業者の方ではないでしょうか。

銅像は頑丈なものという印象からか、建立後に手入れをされないままの作品が多いようです。
銅像(ブロンズ像)を建立する際は何かの意味目的があったにも関わらず、日々のメンテナンスまで考えて建立される事は少ないようですね。
銅像(ブロンズ像)は個人の方が趣味で建てる事はごく稀で、多くは銅像建立プロジェクトが組まれています。
その際、銅像制作費と設置費までしか考えていないため、その後のメンテナンス費については考えていないところが99%ではないでしょうか?
その先の事はその時に考えれば良いという感じで、銅像が建って「バンザーイ!」で終わってしまいます。

しかし、銅像は簡単には壊れませんよね。
数十年、数百年とそこにある訳ですから、本来の銅像建立プロジェクトの成功とは、いつまでも良い状態を維持管理していって、はじめて成功と言えるのです。
銅像が建った事で完成ではなく、あくまでもスタート地点なのです。

前置きが長くなってしまいましたが、銅像(ブロンズ像)は日々のメンテナンスこそが大切だという事をお伝えしたかったのです。
一番良いのは、建立後も管理者の方が、日頃から簡単なお手入れを継続する事です。
お手入れといっても特別難しい事ではありません。
表面のホコリを毛ハタキなどで軽く落とし、柔らかい布で水洗いします。
ただそれだけです。 簡単ですね。

しかしながら、家の掃除だって毎日やるのは面倒なのに、銅像(ブロンズ像)を毎日お手入れするなんて現実問題として出来ません。
毎日出来ないなら、せめて1ケ月に1回でもやりましょう。
しかし、1ケ月も掃除をしないで屋外にある訳ですから、相当なホコリが積もっています。
その上から雨が降って、さらに乾けば汚れが固着してしまいます。
1ケ月分の固着した汚れを落とすのは結構大変ですよ。
でも、ここでやっておけば何とか大丈夫なのですが、現実はやらないところが大多数です。

じゃあ、「1年に1回大掃除の時にしよう!」と思い立って、いざやってみると固着した汚れは既に取れなくなっています。
無理に金属ブラシで擦ったりすると、そこだけ地金が見えて周囲とのバランスがおかしくなります。

この時点で一般の方では手に負えない状態になっています。
問題意識を持つ方がいれば救いなのですが、多くの銅像は団体によって管理されています。
自治体や学校・企業など、担当者が数年おきに変る場合は、面倒な事には関わらないようにしようと思うのか、先送りにされてしまいます。

5年経ち、10年が経ち、建立当時の着色も流れ出し、汚れも積もり、雨ダレ跡が固着して取れなくなっています。
あまりにも見苦しい状態になって、はじめて問題意識を持つわけですが、当然長年の固着した汚れや劣化が進行した状態のものは簡単には戻りません。

しかし、ご安心ください。
銅像の事を熟知した専門家であれば、本来の美しい状態に蘇らせる事が出来ます。     

     → 詳しくは「銅像(ブロンズ像)の修理・修復・クリーニングについて」のページへ
2.「美しい古色と、汚れは全く違うものです」
銅像の汚れや腐食などの劣化は、人間でいう虫歯のようなものと例えています。
そのまま放置しておいて良くなる事は絶対にありません。
それなのに何の処置もされないでいる銅像を結構見かけます。

私も銅像管理者の方に、銅像のメンテナンスをお勧めする事が時々あるのですが、「うちは何の手入れもしない方針です」とのお言葉を頂く事があります。
業者のセールスに対する断り文句という事であれば構わないのですが、本心だとすれば大問題です。

しかし中には、本心から「銅像は手入れをしないもの」と勘違いされている方が多いのも事実です。
これは少しばかり美術品に対する知識が有る方が、間違えて覚えてしまっているのだと思われます。
「経年変化の美しい古色」と「汚れて劣化している状態」とでは全く違います。

室内に展示されている銅像の場合は、雨や鳥の糞がかかる事もありません。
時々ホコリを払ってカラ拭きする程度のお手入れで大丈夫です。
空気中の湿気により、自然の緑青(青錆)が発生し、いい味わいを出してきます。
そのため、ある程度は放っておいても、「経年変化の美しい古色」へ導く事は可能です。
美術館の館内に飾られている、古いブロンズ像がそうですね。

しかし、屋外に建立されている銅像の場合はどうでしょう?
雨や鳥の糞、紫外線に排気ガス。花粉、黄砂などと、これでもかと厳しい環境にさらされています。
そのため、日頃からお手入れを継続していかないと、「経年変化の美しい古色」へ導く事は出来ません。
ここまで読まれた方は、冒頭の「うちは何の手入れもしない方針です」と言っていた銅像管理者の言葉がおかしい事に気が付きますよね?

屋外銅像で自然な美しい古色に変化している作品を見ると、普段から丁寧にお手入れをしているのが分かり、感心します。
(もしくは、銅像メンテナンスのプロに依頼しているのかもしれません。)

銅像は数十年、数百年と、これからもその場に有るものなのです。
管理者の方は「現時点での管理者」なのです。仮に自分の代で建てた銅像だとしても、次の代の管理者に対して良い状態で受け継がなければいけません。
自分一人の判断で「何の手入れもしない方針」「汚れていた方が有り難味ある」などと言っていては、後を継ぐ方が大変な苦労をしてしまいます。     

     →詳しくは、「銅像の色は直すべきなのでしょうか?」のページへ
3.「低予算でも出来るように様々な工夫をしています」
酷い状態の銅像を何とかしたいと思っても、私達のような銅像修復のプロにとっても色々な壁があります。 
その一番手が予算です。
銅像管理者の方がメンテナンスをしたいという問題意識を持っていながらも、予算が組めない事で諦めてしまうケースが時々あるようです。
そのために、セキセイ堂では社内の無駄なコストの削減と、効率良く作業をする事で、作業料金を安くしています。

セキセイ堂は小さな会社です。
スタッフは少ないですが、その少人数で効率良く作業しています。
出張作業により短期間での作業を基本としていますので、必要以上の経費をかけないような努力をしています。

銅像メンテナンスを請け負う会社は、日本全国にあります。
しかしながら、銅像制作をおこなっている会社かと思ったら、実は全ての作業は外注に出し、自社には職人が居ないという会社もあります。
規模の大きな会社と言われている所が、実はそうだったりします。

作業を外注に出す事の弊害は多々あります。
まず、中間業者が入る事によって、適正料金より割高になります。
実際に作業をする下請け業者の方は、限られた予算内で作業をおこなわないといけないため、仕事が雑になってしまいます。

責任の所在が明らかではなくなりますので、銅像管理者の要望がうまく伝わらないため、仕上がりが希望通りにならない心配があります。
また、次回依頼した際には別の下請け業者がやってきて、全く別の方法で作業をされる場合もあります。

当社ではそのような事が無いよう、全ての現場で代表者の私が責任を持って最後まで見届けます。
大規模な作業をおこなう場合は、協力会社からスタッフの応援を頼む場合もございますが、その際も全て当社が中心になって管理していますのでご安心下さい。

出張作業は日本全国どこへでも行きます。
遠方であっても、実費としてかかる交通費・宿泊費のみの追加ですので、料金的にも地元業者へ依頼するより安いと思います。

以前、北関東にある銅像の修復作業を税込157,500円で請けた事があります。
そこの担当者の方から、「実は別の大手企業へも見積りを取ったのですが、そっちは桁が1つ多かったんです。」と言われました。
1桁多いという事は最低でも100万円だったという事です。信じられますか? 少なくとも84万円以上は違うという計算になります。
銅像制作の大手企業と言えば北陸地方にありますので、そこから関東へ出張するとなると交通費はかかります。

それを踏まえても、どうやれば84万円以上も差が出るのかな?と考えました。
作業人数を倍にしても、意図的に作業日数を増やしても、そう簡単にはその差は埋まりません。
あれこれ理由をつけて、いかに高くしようかという考え方で見積りがされているとしか思えませんでした。

その仕事は足場を組まずに、脚立とハシゴによって作業をおこないました。
これも作業料金を安くする工夫の一つです。
足場屋さんに足場の設置を依頼すると、それだけで10万円以上かかるんですね。
費用だけでなく、足場の設置と解体に時間がかかるので、その分だけ作業日数もかかります。

どうしても足場を組まないと作業が出来ない大型像や、高所に設置されている場合を除き、大袈裟に見せるために、わざわざ足場を組む必要も無いのです。
脚立とハシゴで十分に作業は出来るのですから、余計な費用をかけない事で依頼主の負担も減り、結果として予算内で収まるので銅像のメンテナンスが出来るのです。
もしもその時、その大手企業のみに見積りを依頼し、「予算が合わないのでメンテナンスは諦めよう」となってしまっていたら、その銅像は今も汚いままだった訳です。

逆に安すぎても注意が必要です。
当社では様々な工夫で料金を安くしながらも、技術的には他社よりも高い仕事を心がけています。
しかしながら、圧倒的な安さの業者に料金面で判定負けをした事もあります。

東京都内にある銅像の着色修復を依頼された時の事です。
建立後9年が経過したその銅像は、建立時の着色は既にムラ落ちして、雨ダレ跡が固着していました。
鋳造時の欠陥箇所をパテ埋めした部分も露出していました。

これは表面の洗浄だけで直るものではなく、着色をやり直さなければいけないレベルです。
単に着色をすれば良いというのではなく、色落ちがしないような下処理や着色後のコーティング作業も必要です。
その時に当社と競合したのはハウスクリーニング業者の「ダス○ン」で、そちらの作業内容は、高圧洗浄機にて表面洗浄をするだけというものでした。
それを2万円でやるという事です。

今は、高圧洗浄機も1万円台で買えますので一般家庭にもあります。
高圧洗浄機での洗浄だけで2万円取るというのも考えものですが、高圧洗浄機で落ちる汚れは表面の簡単な汚れまでです。
汚れを無理に落とそうとして一極集中して高圧をかけると、銅像の修正箇所が剥ぎ取れる心配もあります。
もちろん、新補修復や着色作業、コーティングはおこなわない訳です。

当社としては銅像修復の専門家として責任ある仕事をしなければいけません。
さすがに着色からやり直す仕事を2万円では出来ません。

その時は料金だけで判断され、「ダス○ン」の方に依頼したそうです。
しかし、何度やっても高圧洗浄機だけの作業では効果は出なかったそうです。
その10ケ月後に当社へあらためて着色修復の依頼が来ました。

銅像修復のような仕事は、これまで依頼した事の無い方がほとんどだと思います。
しかし、間違った業者へ依頼した場合、銅像が損傷してしまう事も考えられます。
料金面だけでなく、きちんとした判断が必要になります。     

     → 詳しくは、「銅像修復はどこに依頼をすれば良いのでしょうか」のページへ
4.「いつの間にか銅像修復の専門家になっていました」
当社代表の私は、国内最大規模の美術鋳造所において銅像の制作や修復に数多く関わってきました。
セキセイ堂として独立後は、銅像の注文制作と銅像修復を柱にやっています。  
   
馬のブロンズ像 注文制作     当社企画制作 「法然上人 銅像」   

最近はインターネットの普及によって、目立った営業活動や宣伝広告もしていない当社のような小さな会社でも、数多くの依頼を頂けるようになりました。
大変有り難く思っています。

特に、銅像修復においては日本全国からの修復依頼を頂いております。
皆様がよくご存知の有名な銅像(ブロンズ像)から、個人所有の人目をみないものまで様々です。
こういう場で過去の修復実績を全て公表すれば分かりやすいのですが、プライバシーや原形制作者の著作権等に配慮し、許可を得た一部の作品のみの公表とさせて頂いています。

私は、けっして銅像修復業者を目指していた訳ではありません。
以前からお付き合いのあった方からの紹介に始まり、その仕事を見た方達からの依頼を受け続けている内に相当な数の銅像を修復していました。

その後、これまでの仕事を自社ウェブサイトにて公表してからは、省庁や日本全国の地方自治体、学校、企業、美術館、個人の方といったお客様よりご依頼頂いております。
また、当社は仏教美術を得意としていますので、特に寺院からの依頼を数多く受けております。
寺院では銅像だけでなく、燈籠や梵鐘、天水桶や賽銭箱の修復も致します。

銅像のメンテナンスは一度だけのお付き合いではありません。
今後も銅像の変化を見守っていく立場として、責任を持って仕事をしています。
庭師さんに植木のお手入れを依頼するような気持ちで、定期的なメンテナンスをお勧め致します。     

     → 詳しくは、「銅像の修理・修復・クリーニングを依頼したいとお考えの方」のページへ
5.「銅像修復で有名になったセキセイ堂ですが、それだけはありません」
これまでお話したように、周囲からの依頼を受けている内に、世間からは銅像修復の専門家として認知されるようになりました。
しかし、銅像修復だけをやっているわけではありません。

銅像修復から発生する様々な事にも取り組んでいます。

「木台座の修復」
ある学校で屋内展示されている胸像がありました。
屋内ですので胸像本体の劣化は少ないのですが、胸像を置く木台座は窓からの強い太陽光と空調による乾燥で、木材表面はかなり傷んで見えました。
担当者の方は、「あらたに木台座だけ新調しなければいけない」と考えていたようでしたが、実際は表面が傷んできているだけで、内部や構造上は何ら問題の無い状態でした。

従来の木台座は家具の仕上げに近いものがほとんどです。
一般的にはそれで大丈夫なのですが、ここでの環境に配慮して屋外用の浸透性塗料を使う事にしました。
寒暖差の激しい別荘地のログハウスにも使用されるものです。

古い着色やニスを落とした後に、浸透性塗料をムラの無いように上塗りします。
浸透性塗料ですので木材内部に潤いを蘇らせ、さらに撥水力も強いので、ホコリが付いたら水拭きも可能です。

「銅像の引越し」
他には、銅像の移設もおこなっています。
工場移転に伴い、屋外にある胸像の引越しを依頼される事もあります。
また、これまで屋外にあった胸像を、屋内に移したいという相談も度々受けます。

屋外の胸像は石台座に設置されています。
胸像の取り付け方法を知らない業者に依頼してしまうと、取り外し時に胸像本体を傷めてしまう恐れがあります。
大切な作品を傷めてしまわないように、経験豊かな専門家に依頼して下さい。  
  


最後まで読んで頂きありがとうございます。ご不明な点やご質問がございましたらお気軽にお問合せ下さい。    セキセイ堂 代表 外崎祥志